彼氏じゃないの?

彼女じゃないの?

マンネリの関係・・・





(剣心は、私のこと、どう思っているのだろう?)
自分に問いただしてもいつも答えは出ない
嫌われてはいないと・・・思う
でも、好きかと問われると・・・どうなのだろう・・・

「嫌いじゃない」というのと、「好き」というのでは大きく違う

剣心が私の側にいてくれるのは・・・
ただ放って置けなかっただけ?
独りにしておいては危なっかしくて、だから?
それとも・・・
少しは、私のこと・・・?

(わからない)
剣心はなにも言ってくれはしないから・・・
巴さんのお墓に連れて行ってくれたこと
誰でもない、私と二人で連れ立って行ってくれたこと
「一番大切な人」と言ってくれたこと
その剣心の気持ちを、信じられないわけじゃないの

(でも・・・)
不安なの・・・
剣心のあの優しさは
私への責任感や同情からきているのではないかと思えて
(不安なのよ・・・)


あの日から
何かが少しは変わるかと思ったのに
あなたは何も言わない
何も変わらない
出会ったあの頃と変わらない
その柔和な言葉と態度で
私に接するから

私は
どうしようもなく不安なの

あなたを支えていきたいと
そう、自分に誓ったけれど
いつか
近い未来に
またあなたがいなくなってしまいそうで
不安で不安でしかたない

だから・・・





おめかしをして

綺麗になって

アイツみかえしちゃえ





「ちょっと出かけてくるから」
そう言って門を出ようとした私を呼び止める。
「薫殿? ・・・今時分どこへ?」
時は黄昏時。女一人で出かけるには少し時間が遅い。
きっと心配してくれたのだと思う。
けれどその優しさが、保護者としての優しさに思えてしまって、今の私には痛い。
「うん・・・ちょっと」
そのまま、剣心を見ないようにして門をくぐる。
きっと今、訝しげな、それでいて心配そうな表情をしているに違いない。
そして迷っている・・・
「それでは拙者も一緒に・・・」
その言葉を言うべきかどうか。

「たぶん・・・そんなに遅くはならないから」
剣心の言葉を待たずに、私は足早に家を後にした。
背中に視線を感じたけれど、振り向きはしなかった。




剣心はどう思っただろう。今の私を。
いつも以上にめかしこんだ私を見て不安に思ってくれただろうか。
淡い紅をさしていることに気がついて・・・?




それでも・・・
剣心は首をひねりながらも、洗濯物を取り込みに行ったに違いない。




私が一人になりたかった
剣心を一人にしたかった


一人になって考えたかった
自分の気持ちを整理したかった
試したかった
私を
剣心を


一人にして考えて欲しかった
私の行動の意味を
そして感じて欲しかった
自分の気持ちがどこにあるのか
見つめて欲しかった
誰のためでなく、自分のために
自分は、本当は何をしたいのか





町は黄金色に輝いて、何もかもが綺麗に見える。
私は黄昏時の町中を一人、ゆっくり歩く。


おめかしをして
綺麗になって・・・






剣心は、どうしたい?

私は、今のままでも我慢できる?







少しくらいは自信過剰で

生きてもいいんじゃない?






妙さんのところには行けないから
仕方なく私は甘味処に入って時間をつぶす。

今更になって自分の行動に少し後悔していた
きっと剣心は私を心配してる
それが保護者としてなのか、それ以上の何かがあるのか
私にはわからないけれど
それでもきっと心配してくれている
自分が支えていきたいと思っている人を不安にさせるなんて最低
「私っていやな女・・・」
思わず洩れた呟き。
聞いてくれたのは温くなってしまったあんみつくらい・・・。




わかっているの。
剣心は自分に自信がないだけなんだってこと。
自分の過去が重すぎて、その罪の意識が強すぎて
何に対しても積極的になれないってこと。
何かに強く執着したり
欲しがったりすることを
罪悪だって感じていること
そしてその自分の過去に
私を巻き込みたくないだけなんだってこと
わかっているの・・・

優しい人だから
強いくせに子供のように弱いから
幸せに慣れていなくて
臆病な人だから
だから何も言わないだけだってこと
わかっているつもりなの・・・


でも・・・
私は知りたい
剣心の口から直接聞きたい





ねぇ・・・

    私を・・・

       好き・・・?









退屈じゃない

物足りないの

マンネリの恋愛





日が暮れてしまった・・・。
剣心はきっと心配している。
わかっていても、なかなか帰ろうという気になれなくて、甘味処を出てからもおしゃべり好きなおかみさんがいる小物屋に顔を出したりした。
おかみさんのよく開く口に適当に相槌をうちながら、それでも頭から離れないのはやっぱり剣心のこと。



剣心は気づいてくれただろうか?
それとも・・・
私は帰ったら、どんな顔して剣心に会えばいいのかわからない。
剣心を試した自分に嫌気がさすぶんだけ、会うのが気まずい。
それに・・・少し怖い。





私は剣心のことが好き
それは、伝えてはいけない気持ちだったのかもしれない
この言葉が
剣心の重荷になっているのかもしれない
でも、私は伝えたかった
見てるだけじゃ嫌だった
少しでも近くに行きたかった
それがどんな苦しみを伴うことであっても
「私は剣心の側にいたい」
この気持ちだけは変わらない

それでも
私は今のままじゃやっぱり・・・駄目
好きでも嫌いでも・・・いい
なにか答えが欲しい




私の気持ちを

無視され続けるのは

もう、我慢できなかった

少しでも、今の関係を変えたかったの
















とぼとぼと、なんとなく重い足を家に向ける。
今夜は月が綺麗で、夜道だというのにうっすらと明るい。
(そういえば、剣心と出会ったのもこんな月の明るい晩だった・・・)
出会った時から剣心は優しくて、いつも人のことばかり気にして・・・


そんな優しい剣心を、私は・・・


「帰ったら謝ろう・・・それから、もう一回伝えよう」
そして今度は、ちゃんと剣心から返事をもらおう。
返事をくれるまでは付きまとって困らせてやろう。
その答えが、どんなものでもかまわない。

私が、剣心を好きなのだから。

私が側にいたいのだから。

きっと・・・大丈夫・・・

それが、私の答え

私は、家路に向かう足を速めた。
あと少し、あの角を曲がれば・・・




彼氏じゃないの?

彼女じゃないの?

マンネリの関係・・・

口先じゃなく
本気出さなきゃ
現在(いま)は待てないから

好きになるのはだれもできるけど

ときめく気持ち変わらずいるのは・・・










song by Every Little Thing 「Get Into A Groove」